IB DP 1年目ロードマップ|Month別にやることを逆算で整理する
「IA、EE、CAS…何から手をつければいい?」Year 1の序盤は締め切りが遠く見えるからこそ、逆算ロードマップで今やるべきことを整理しておくことが重要です。
IB DP 1年目、何から手をつければいいのか
DP(Diploma Programme)がスタートした瞬間、多くの生徒が「とりあえず授業についていこう」と思い、気づけばYear 1が終わっている。そして2年目に入ってから、EE(Extended Essay)・IA(Internal Assessment)・CAS・TOKが一気に締め切りを迎え、試験勉強と完全に衝突する——これが最も典型的な「IB生の後悔パターン」だ。
Year 1でやるべき最優先事項はシンプルに3つ。
- EEのトピックを探索し、仮テーマを絞り込む
- CASの「体験→振り返り→記録」サイクルを月1回以上回す
- 各科目のIAに向けてリサーチクエスチョン(RQ)を早期に仮決めする
この3つをYear 1の前半から意識的に動かしておくと、Year 2はほぼ「完成と微調整」の時間に使える。以下で月別の動き方を逆算しながら具体的に整理していく。
なぜ「逆算」で考えるのか
IB DPの評価構造を理解すると、逆算の必要性がすぐわかる。最終試験(Final Examinations)はYear 2の終盤に集中しているが、それ以前にEE・IA・TOKの提出が重なる。学校によって内部締め切りは異なるが、Year 2の後半は試験対策に専念できる状態を作るのが理想であり、そのためにYear 1で何を終わらせておくかを逆算する必要がある。
Year 1の全体像:前半と後半で何が違うのか
Year 1を大きく「前半(Month 1〜5)」と「後半(Month 6〜12)」に分けると、それぞれの役割はこうなる。
| 時期 | 主な役割 | 重点コンポーネント |
|---|---|---|
| Month 1〜2 | 環境適応・習慣形成 | CAS記録開始、EE分野の仮探索 |
| Month 3〜5 | 探索と仮決め | EEトピック絞り込み、IA-RQ仮決め |
| Month 6〜8 | 資料収集・整理 | EE文献調査、IA予備実験・予備調査 |
| Month 9〜12 | 骨格構築 | EE計画書確定、IA方法論確定、TOK習慣定着 |
この表はあくまで目安。学校の内部スケジュールや科目によって順序は変わるため、必ず担当教員と学校のカレンダーで確認してほしい。
Month 1〜2:最初の2ヶ月で「三つの習慣」を作る
授業適応と同時にCASを動かす
最初の2ヶ月で多くの生徒が犯すミスは、「授業についていくことだけ」に集中してCASを後回しにすることだ。CASは活動の積み重ねとリフレクションの質で評価される。スタート直後から意識的にサイクルを回しておくと、Year 2終盤に証拠集めで慌てるリスクが大幅に減る。
CASには Creativity(創造)・Activity(活動)・Service(奉仕)の3要素があり、それぞれを意識した活動選びが必要だ。詳しい進め方は IB CASの進め方|活動の選び方・学習成果・リフレクション にまとめているので参照してほしい。
EEの「分野探索」を始める
EEはDPで最も時間がかかるコンポーネントの一つだ。Year 2に入ってからテーマを決め始めると、授業・IA・試験対策と完全に衝突する。Month 1〜2の時点では「完全に決める」必要はなく、「自分がどの分野に興味があるか」を探索するだけでよい。
具体的には:
- 授業で「もっと深く知りたい」と感じたトピックをメモする
- 過去に読んだ本・経験した出来事の中で「問いを立てられそうなもの」を書き出す
- EEの学校内スーパーバイザー(指導教員)が誰になるかを早めに把握する
EEの全体プロセスは IB Extended Essay (EE) の書き方|テーマ選びから提出までの完全ガイド で詳しく解説している。
TOKへの「慣れ方」を作る
TOKエッセイとプレゼンテーション(Exhibition)はYear 2に集中しがちだが、知識の問い(Knowledge Question、KQ)に慣れる下地はYear 1から作れる。
Month 1〜2でやること:
- TOKの授業で扱われたKQをノートに書き留め、1〜2文で自分の答えを書いてみる
- ニュース・日常の出来事に対して「これはなぜ知識として成立するのか」という視点で見る習慣を持つ
Month 3〜5:「仮決め」のタイミングを逃さない
EEトピックを絞り込む
Month 3〜5は、EEのトピックを「まだ曖昧な興味」から「具体的な問い」に近づける時期だ。この段階での目標は、「ざっくりしたリサーチクエスチョンの初稿」を持つこと。
絞り込みのステップ:
- 分野を1〜2つに絞る(例:生物学・歴史・経済学など)
- その分野の中で「比較できること」「データや文献が存在すること」を確認する
- 「〜はなぜ?」「〜の違いは何か?」という形でRQの初稿を書く
- スーパーバイザーに相談し、フィードバックをもらう
この時点のRQは粗くていい。大切なのは「問いを立てる練習」を積み重ねることだ。
各科目のIA-RQを仮決めする
IAは各科目の授業進度に連動する。科目によってRQの性質は大きく異なるが(実験系・論述系・データ分析系など)、共通して言えるのは「早期に仮決めしておくとYear 2の本執筆が格段にスムーズになる」という点だ。
IAの全体像と高得点の型については IB Internal Assessment (IA) の書き方|高得点を取る型と進め方 を参照してほしい。また、科目ごとの特性については各科目ガイド(IB生物 HLガイド・IB経済 HLガイドなど)も確認しておくと方向性が見えやすい。
| 科目タイプ | Month 3〜5でやること |
|---|---|
| 理系(生物・化学・物理など) | 実験テーマの仮決め、先行研究の確認 |
| 文系・社会系(経済・歴史など) | データソースの確認、RQの初稿作成 |
| 言語系(English Aなど) | 作品選定、分析軸の仮設定 |
| 数学 | 探究テーマの仮決め、使用する数学的手法の確認 |
具体的な締め切りは必ず担当教員に確認すること。学校によって内部期限が大幅に異なる。
CASのサイクルを定着させる
Month 3〜5では、Month 1〜2に始めた活動を継続しながら、リフレクションの質を上げていく。よくある失敗は「活動はしているがリフレクションが薄い」というもの。
リフレクションに含めるべき視点(目安):
- 何を体験したか(Describe)
- その体験から何を感じ、何を考えたか(Analyze)
- 次にどうつなげるか(Apply)
月1回のリフレクションサイクルをカレンダーに固定予約してしまうのが最も確実な方法だ。
Month 6〜8:「資料収集」と「予備調査」の夏を活かす
多くのIBスクールではYear 1の夏休みがこの時期にあたる(学校によって異なる)。この期間は、EEの文献収集とIAの予備実験・予備調査に最も適したタイミングだ。
EEの文献調査を本格化する
RQの初稿が決まっていれば、夏休みを使って文献・資料を収集できる。
やること:
- 学術データベース(Google Scholar・JSTOR・学校が契約しているデータベースなど)で先行研究を検索
- 読んだ文献のポイントをメモし、引用管理ツール(Zotero・MandeleyなどはOIB生も使いやすい)で整理
- 読み進める中でRQを修正・精緻化する
この段階でRQが変わることは珍しくない。柔軟に修正しながら方向を固めていく。
IAの予備実験・予備調査を行う
理系科目の場合、Method(方法論)を確定する前に予備実験を行うことで、本実験の精度が上がる。社会系・文系科目の場合は、データソースの信頼性確認や文献の事前整理が予備調査にあたる。
Month 9〜12:Year 1後半で「骨格」を完成させる
EEの計画書(Research Plan)を確定する
Year 1の後半には、EEの方向性をスーパーバイザーに承認してもらい、研究計画を文書化する。学校によっては正式な提出フォームがある場合もある。
この段階での確認ポイント:
- RQは答えられる(Answerable)か
- 適切な資料・データにアクセスできるか
- 論文の構成(アウトライン)の初稿を書けるか
計画書が固まると、Year 2前半の第1稿執筆がスムーズに進む。
IAの方法論を確定し、本格調査に備える
Year 1後半には、IAのMethodを固めておくことが理想的だ。理系であれば実験手順と変数の整理、社会系であれば調査・分析の枠組みを確定する。
Month 9〜12のIAチェックリスト:
- [ ] 最終的なRQが担当教員に確認済みか
- [ ] データ収集の方法・ツールが決まっているか
- [ ] 参考にした先行研究・理論的枠組みをメモしているか
- [ ] 倫理的配慮(人を対象とする調査など)が必要か確認したか
TOKのKQ思考を深める
Year 1後半は、TOKの授業で扱われたテーマを振り返りながら「自分はどのKQに反応するか」を把握しておく時期だ。Year 2でエッセイのプロンプトを見たとき、過去に考えてきたKQがそのままネタになることが多い。
日常的にできること:
- TOKの授業後に「今日のKQは何だったか」を一言でメモする
- 授業外でのニュース・本・映画で「これはTOKのどのテーマに関係するか」を意識する
Year 1を通じた時間管理:どう優先順位をつけるか
IB DPで最もよく聞く悩みは「時間が足りない」だ。ただ、多くの場合は「何を先にやるべきか」の優先順位が見えていないことが原因になっている。
IB Diploma の時間管理術|IA・EE・試験を両立する計画術 でも詳しく解説しているが、Year 1で特に意識してほしいのは次の原則だ。
締め切りのある作業より、締め切りのない作業を意識的にスケジュールする。
EEの文献収集・CASのリフレクション・TOKのKQメモは、目の前に締め切りがないため後回しになりやすい。しかし、これらをYear 1で積み重ねておかないとYear 2に一気に負担が来る。「緊急でないが重要なこと」をカレンダーに入れる習慣がYear 2の余裕を作る。
| 作業タイプ | 特徴 | Year 1での扱い方 |
|---|---|---|
| 授業の課題・宿題 | 締め切りあり・緊急 | こなすが圧倒されない |
| EE文献収集 | 締め切りなし・重要 | 週に一定時間を固定予約 |
| CASリフレクション | 月次・重要 | カレンダーに固定 |
| TOKのKQメモ | 日常的・習慣化 | 授業後5分で完結させる |
| IA-RQの検討 | 中期・重要 | 月1回の見直しタイムを設ける |
よくある「Year 1の失敗パターン」と対策
パターン1:EEを「Year 2で考えればいい」と思っている
Year 2に入ってからEEのテーマを決めようとすると、授業・IA提出・TOK・試験対策が同時に始まるため、EEに集中できる時間が極端に少なくなる。Year 1の前半から探索を始め、後半には方向性を固めておくことが現実的な解だ。
パターン2:CASを「活動記録」だと思っている
CASは「活動の数」ではなく「成長の証拠」が問われる。活動の後にリフレクションを書き、学習成果(Learning Outcomes)との関連を示すことが重要だ。Year 1から記録の質を意識しておくと、Year 2終盤に証拠集めで苦労しない。
パターン3:IAを「Year 2に授業が終わってから書くもの」と思っている
IAは授業内容の深化として位置づけられているため、授業と並行して進めるのが本来の姿だ。Year 1からRQの仮決め・予備調査を進めておくと、Year 2の執筆期間に余裕が生まれる。
パターン4:TOKを「授業時間だけのもの」と思っている
TOKの本質は「日常の中で知識を問い続ける習慣」にある。Year 1から日常的にKQを意識する習慣を作っておくと、Year 2でエッセイのプロンプトに向き合ったときに「すでに考えてきたこと」として使える素材が蓄積されている。
月別チェックリスト(Year 1 全体)
以下はあくまで目安。学校の内部締め切りや科目ガイドの最新版を最優先で確認し、自分のカレンダーに落とし込むことが最大の対策だ。
Month 1〜2
- [ ] CASポートフォリオを開設し、活動を1つ以上開始
- [ ] CASリフレクションの第1回を書く
- [ ] EEの関心分野を2〜3つリストアップ
- [ ] EEスーパーバイザーが誰になるか把握する
- [ ] TOKの授業後KQをノートに記録し始める
- [ ] 各科目のIA概要(何を問う課題か)を授業中に把握する
Month 3〜5
- [ ] EEの仮RQを初稿で書き、スーパーバイザーに相談
- [ ] 各科目のIA-RQを仮決めし、担当教員に方向性を確認
- [ ] CASの月次リフレクションをカレンダーに固定
- [ ] TOKのKQに対して自分の答えを短文で書く練習を始める
Month 6〜8(夏休み期間の目安)
- [ ] EEの文献収集を本格化(文献メモを蓄積)
- [ ] IAの予備実験・予備調査を実施
- [ ] CAS活動の継続と記録更新
- [ ] 苦手科目の基礎を最低限維持する復習
Month 9〜12
- [ ] EEの研究計画(RQ・アウトライン・参考文献リスト)を確定
- [ ] IA-RQを最終確定し、担当教員の承認を得る
- [ ] CASの中間状況を自己点検(3要素のバランス・記録の質)
- [ ] TOKのKQメモを振り返り、Year 2のエッセイに使えそうなテーマを仮リストアップ
- [ ] Year 2の学校内部スケジュールを早めに入手し、カレンダーに転記
「完璧な計画」より「動いている状態」を優先する
ロードマップは地図に過ぎない。大切なのは、どんなに粗くても「動き始めている状態」を作ることだ。EEのRQは変わっていい。IAの方法論は修正していい。CASのリフレクションは短くていい。それよりも、「月1回以上、何かを前に進めた」という積み重ねが、Year 2に余裕を生む唯一の方法だ。
IBのスコア全体の上げ方については IBスコアの上げ方|評価の仕組みと45点満点への戦略 も合わせて読んでほしい。Year 1のうちから「どのコンポーネントが最終スコアにどう影響するか」を理解しておくと、優先順位の判断が格段に楽になる。
Quick IBでは、こうした年間計画の立て方からEE・IAの個別サポートまで、IB経験者が1対1で対応している。Year 1のうちに「自分の状況を整理したい」という相談も歓迎している。