IB経済 IA 完全ガイド|コメンタリー3本の選び方と高得点を取る型
IB経済のIAは3本のコメンタリーで構成され、記事の選び方から経済理論の適用方法まで戦略が得点を大きく変えます。採点基準の本質を理解して、減点を防ぐ書き方を身につけましょう。
IB経済 IA(コメンタリー)とは何か、何が求められるのか
IB経済のInternal Assessment(IA)は、現実のニュース記事を出発点に、経済理論を使って分析・評価する「コメンタリー」を複数本提出する課題だ。
コメンタリーの本質は、経済学の「道具」(概念・モデル・図)を使って、現実の出来事を読み解く力を示すことにある。記事の内容を要約するだけでは評価されない。理論と現実を接続し、その含意を批判的に評価するところまで書いて初めて採点基準を満たせる。
「図を描いたつもりなのに点が伸びない」という状況の多くは、図と本文が連動していないことが原因だ。まずここを押さえてほしい。
コメンタリー3本の「セクション振り分け」はどう考えるか
IBの経済カリキュラムは複数のセクション(例:ミクロ経済学・マクロ経済学・国際経済・開発経済など)に分かれている。コメンタリー3本は原則として異なるセクションから記事を選ぶことが求められており、同じセクションを複数回使うことは通常認められない。
ただし、セクションの正式な名称・数・振り分けルールは改訂によって変わる可能性がある。必ず最新の公式Subject Guideを確認し、担当教員に振り分けを承認してもらってから記事選びを確定させること。
どのセクションを「どの順番で」書くか
順番に決まりはないが、自分が最も得意なセクションを2本目か3本目に配置するという戦略が効果的だ。1本目は書き方の練習を兼ねることが多く、フィードバックを受けて改善できる余地を残しておくとよい。
また、3本で扱うセクションのバランスを早い段階で教員と確認しておくと、記事選びの段階でのやり直しを防げる。
記事選びの基準は何か──「使える記事」と「使えない記事」
コメンタリーの出来は、記事選びの時点で大きく決まる。 書き始めてから「この記事では分析が難しい」と気づいても手遅れになることが多い。
使える記事の特徴
| 基準 | 使える記事の例 | 使いにくい記事の例 |
|---|---|---|
| 具体的な政策・市場変化が書かれている | 政府が特定品目に補助金を導入した | 経済全体の現状を語る長文レポート |
| 因果関係が読み取れる | 最低賃金引き上げ → 雇用への影響 | 「景気が悪い」という抽象的な記述 |
| 図が自然に当てはまる | 需要・供給、AS-AD、比較優位など | 複数の理論が混在して整理しにくい |
| 評価の余地がある | 政策の効果・副作用・代替案が論じられる余地がある | 単純な事実報道だけで賛否が発生しにくい |
| 信頼性のある媒体 | BBC、The Economist、Reuters、各国の政府発表など | 個人ブログ、匿名記事 |
記事を探す実践的な手順
- カリキュラムのセクションを確認してから探す。先に「ミクロの価格規制を書く」と決めてから記事を探すと効率的だ。
- 英語記事を基本にする。IBは英語で評価されるため、日本語記事を英訳して使うよりも直接英語記事を探す方が用語の正確性が保ちやすい。
- 発行日を確認する。コメンタリーに使える記事の発行時期には制限がある場合がある。公式ガイドと教員に確認すること。
- 1つのトピックに対して候補を複数用意する。記事が浅い・理論の当てはまりが弱いと感じたら別の記事に変える余裕を持っておく。
コメンタリーの構成はどう組むか──「型」を先に押さえる
コメンタリーに決まったフォーマットはないが、高得点を取る答案には共通した論理の流れがある。以下の型を基本として理解した上で、各コメンタリーに合わせて調整していくとよい。
高得点コメンタリーの基本構造
① 記事の要点を1〜2文で示す(Introduction)
記事で起きていることを端的に述べ、「どの経済理論・概念でこれを説明するか」を宣言する。ここでは要約に終わらず、分析の方向を示すことが大事だ。
例えば「この記事は、政府による価格上限(price ceiling)の導入が市場にどのような影響をもたらしたかを報告している。以下では需要・供給モデルを用いて分析する」といった書き出しが典型的だ。
② 理論を説明し、図を使って分析する(Analysis with Diagrams)
これがコメンタリーの核心部分だ。
- 関連する経済理論を正確な用語で説明する
- 図を描き、その図の変化(シフト、均衡点の移動など)を本文で逐一説明する
- 記事の具体的な情報(国名、品目、政策の内容)を図の説明と結びつける
図と本文の連動を徹底することが最も重要だ。図を描いて「以上の通り」で終わるコメンタリーは評価されない。「図の〇〇の点が、記事中の△△という現象を示している」という形で繋げる。
③ 評価を行う(Evaluation)
Evaluationは「良い点と悪い点を列挙する」ことではない。「なぜその政策・現象が期待通りに機能しない可能性があるか」「どんな条件のもとでは異なる結果になるか」「代替案はあるか」を論じることがEvaluationだ。
Evaluationの切り口の例:
- 短期と長期での効果の違い
- 理論の前提が現実に当てはまるかどうか
- 受益者と損失者(stakeholder)を区別した考察
- 政府の失敗(government failure)の可能性
- データ・情報の限界
④ 結論(Conclusion)
分析とEvaluationを踏まえた上で、「この政策・現象は経済学的にどう評価されるか」を簡潔にまとめる。新しい論点を持ち込む場所ではない。
よくある減点パターンとその対策はどこか
コメンタリーの採点で繰り返し見られる減点パターンは、構造的な問題と内容の問題に分けて把握しておくと対策しやすい。
減点パターン① 図と本文が連動していない
症状: 図は正確に描けているが、本文では図について一切言及しない。または図では供給曲線が左シフトしているのに、本文では「需要が増加した」と書いている。
対策: 図を描いた後、必ず「図のどの部分がどの経済現象に対応しているか」を本文で説明する文章を追加する。図と本文を交互に見直し、矛盾がないか確認する習慣をつける。
減点パターン② 記事の要約で終わっている
症状: 記事の内容を丁寧に説明しているが、そこに経済理論を接続する議論がない。
対策: 「記事では〇〇が起きた」と書いたら、必ず次の文で「これは経済学的には〇〇として説明される」 という接続を入れる。記事の文章をそのまま引用・翻訳するだけの段落は削除する。
減点パターン③ Evaluationが「メリット・デメリットの列挙」になっている
症状:「この政策には良い点として〜がある。悪い点として〜がある。」と並べるだけで終わる。
対策: それぞれの点について「なぜそうなるか」「どんな条件でそうなるか」「どの程度の影響があるか」を深掘りする。ある限界点について、「短期的には〇〇だが、長期的には〇〇になりうる」「もし需要の価格弾力性が低ければ、〇〇という理由でこの政策は機能しにくい」という形で経済理論に戻りながら論じる。
減点パターン④ 用語が不正確または不一致
症状: 「上がった」「増えた」などの日常語を使い、経済用語("increase in demand"、"rightward shift in the supply curve" など)を使っていない。または同じ概念を指す言葉が答案の中で統一されていない。
対策: 初稿を書いた後、日常語を使っている箇所をリストアップし、正確なIB経済用語に置き換える。教科書のGlossaryを参照しながら確認するのが効果的だ。
減点パターン⑤ 図が不正確または不完全
症状: 軸ラベルがない、シフトの矢印がない、均衡点のラベルがない、価格・数量の変化が図上で明示されていない。
対策: 図を描くたびに以下のチェックリストを使う。
| チェック項目 | 確認 |
|---|---|
| 縦軸・横軸にラベル(Price/Quantity など)があるか | □ |
| 曲線にラベル(D, S, AD, AS など)があるか | □ |
| 均衡点(E1, E2 など)がラベル付きで示されているか | □ |
| シフトの矢印があるか | □ |
| 価格・数量の変化が点線と矢印で示されているか | □ |
| 図にタイトルまたはキャプションがあるか | □ |
セクション別に「使いやすい理論・図」の目安はどこか
コメンタリーを書く際、どの理論・図を選ぶかによって分析の深さが変わる。以下は各経済セクションでよく使われる理論の目安だ。ただし、選択する理論は必ず記事の内容と合致していることが前提であり、理論を先に決めて記事に無理やり当てはめるのは逆効果になる。
ミクロ経済学セクションで使いやすい理論
- 需要・供給モデル(Demand and Supply):価格変化・政策介入(税・補助金・価格規制)を扱う記事に適用しやすい
- 価格弾力性(Price Elasticity of Demand/Supply):税収・補助金の帰着、輸入・輸出への影響を深掘りする際に有効
- 市場の失敗(Market Failure):外部性(Externality)、公共財(Public Goods)、情報の非対称性(Information Asymmetry)を扱う記事に
- 消費者余剰・生産者余剰(Consumer/Producer Surplus):政策の利害関係者分析に使いやすい
マクロ経済学セクションで使いやすい理論
- 総需要・総供給モデル(AD-AS Model):財政政策・金融政策の効果を論じる記事に
- 乗数効果(Multiplier Effect):政府支出・減税の効果分析に
- フィリップス曲線(Phillips Curve):インフレと失業のトレードオフを論じる記事に
- 景気循環(Business Cycle):GDPの変動を扱う記事に
国際経済セクションで使いやすい理論
- 比較優位(Comparative Advantage):貿易政策の記事に
- 貿易障壁(Trade Barriers:Tariffs, Quotas):関税・輸入規制を扱う記事の定番
- 為替レート(Exchange Rates):通貨安・通貨高の影響を論じる記事に
- 国際収支(Balance of Payments):経常収支・資本収支に関する記事に
提出前の最終チェックはどうするか
提出直前に全体を見直す際は、以下の観点で確認すると見落としを防ぎやすい。
内容の確認
- [ ] Introductionで「何の理論を使うか」が明示されているか
- [ ] 記事の内容と理論の接続が、段落ごとに明確になっているか
- [ ] すべての図が本文で説明されているか
- [ ] Evaluationが「列挙」ではなく「深掘り・条件付き分析」になっているか
- [ ] Conclusionが新しい論点を出さず、分析をまとめているか
形式の確認
- [ ] 字数が規定の範囲内か(公式ガイドと教員の指示で確認)
- [ ] 記事のコピーが正しく添付されているか(コメンタリーに記事を添付する形式の場合)
- [ ] 記事の出典(URL・発行日・媒体名)が正しく記載されているか
- [ ] セクションの振り分けが適切か(教員に確認済みか)
- [ ] 3本のコメンタリーで、同じセクションを重複して使っていないか
用語・図の最終確認
- [ ] 経済用語が一貫して使われているか
- [ ] 図のラベルが完全か(上記チェックリスト参照)
- [ ] 略語を使う場合、初出で正式名称を英語で示しているか
IAの完成度をさらに高めるために
IAのコメンタリーは、IB経済の学習全体の中に位置付けて取り組むと質が上がりやすい。普段の授業で習う理論を「どの現実の出来事に当てはめられるか」という視点で常に意識しておくと、記事選びの段階から選択肢が広がる。
また、経済IAは他のIAとは異なり、複数本を段階的に提出・フィードバックを受けながら仕上げていくプロセスが多い。早い段階で教員に記事の候補と使用する理論の方向性を相談し、承認を受けてから本格的な執筆に入ることを強く勧める。
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